矯正治療を終えた後、「リテーナー」と呼ばれる装置をつけている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
リテーナーの装着はいわば歯列矯正の「山場」。矯正装置を外したあとの歯は元の位置に戻ろうと強い力が働いていますので、わずかな間リテーナーを外していただけで動いてしまうことも。矯正治療を終えたあとのきれいな歯並びを保つために重要なリテーナーについて、今回は詳しくお伝えしていきます。
1.リテーナーの役割
歯が元の位置に戻るのを防ぐ
リテーナーは別名保定装置といいます。外見はきれいな歯並びになっていても、矯正治療後すぐの期間は歯槽骨(歯を支えている骨)や歯の周囲の歯根膜にはまだ歪みが残っているため、元の位置に戻ろうとする作用が強く働いています。その作用を抑えるのがリテーナーの最大の役割です。
矯正装置の装着期間を短くするため
仮にリテーナーを使わずに上記の「作用」を安定させようとする場合、また同じ期間だけ矯正装置を着ける必要があります。矯正装置を着けているあいだはどうしても虫歯のリスクが高まってしまいますが、取り外しのできるリテーナーなら歯磨きもしやすいので虫歯のリスクは低下します。
噛み合せを安定させるため
矯正を終えても、矯正前の歯並びでの噛み癖は残っています。リテーナーは矯正装置に比べて少し緩みがありますので、より細かく歯を移動させることができ、噛み合せしやすい歯並びに整えてくれるのです。
2.リテーナーの注意点
常に装着しているのが前提
リテーナーをわずか二、三時間のあいだ外していただけでも、はめ直してみたらきつくなっているということも珍しくありません。それだけ歯が動いているということですね。歯が元の位置に戻ろうとする作用を抑えるために、リテーナーはときどき着けるというのではなく、常に装着していることが前提です。
ただし食事や歯磨きなど、邪魔になるときには外して行います。自分で着脱できるのはリテーナーの便利なところ。矯正装置を着けていたときは食べられなかったものも食べられますし、歯磨きもしやすくなります。ただしそのまま装着するのを忘れないようにしましょう。
手入れを欠かさないこと
つねに口内に装着しているリテーナーには汚れがたまりやすく、不潔なままにするとカビが生えてしまったり、リテーナーに付着した細菌が虫歯の原因になることもあります。また口臭の原因にもなりかねません。歯磨きをするときにはリテーナーも一緒に手入れしましょう。ただし、リテーナーはキズがつきやすいので研磨剤の入った歯磨き粉や、硬い歯ブラシなどを使うのはおすすめできません。
専用の洗浄剤を使うようにしましょう。
装着しているあいだは話しにくい
リテーナーのプラスチック部分が舌に触れるため、装着してすぐの慣れないあいだは発音がしにくいと感じることがあります。十日も経てば慣れてくることがほとんどですが、仕事など重要な局面では短時間であれば外してもかまいません。
装着しながら飲食をしない
リテーナーを装着しながらものを食べると、噛んだときにプラスチック部分が割れてしまうことがありますので、必ず外してから食べるようにしてください。飲み物は水やお茶ならかまいませんが、糖分の入った飲み物は厳禁です。リテーナーと歯の隙間に糖分が入ると歯を溶かしてしまい、虫歯の原因になります。
装着するときに噛んで押し込まない
リテーナーを装着するときにずれていたり、浮いていたりすることがあります。これを慣れてくると歯で噛んで押し込んだりする方がいますが、リテーナーのプラスチック部分が割れたりワイヤーが曲がる原因になるのでおすすめできません。最後まで手で装着してください。
外したリテーナーはケースにしまうこと
リテーナーを放置していて家族が間違って捨ててしまった例もあります。踏んだり落としたりするともちろん故障の原因になりますので、紛失を防ぐ意味で専用ケースにしまう習慣をつけておくのがベターです。
3.どのくらいの期間、リテーナーをつけるの?
はじめは24時間つねに装着する
矯正装置を外したてのときは一番歯が元の位置に戻りやすい時期です。食事などでリテーナーを外したあと、再び装着するときつく感じるときがありますが、これはそれだけ歯が動いた証拠。あまり長い間外していると、リテーナーが入らなくなってしまうことも。こうなるとリテーナーを作り直さなければいけなくなったり、歯の動きが大きい場合はまた矯正装置を装着しなければならなくなったりして余計な時間と費用を割くはめになってしまいます。
1年半が過ぎた頃から夜間の装着に
リテーナーを装着してからおよそ一年半が過ぎるとかみ合わせが安定してくるといわれています。このころから徐々にリテーナーを外す時間を作り、リテーナーをはめ直したときにきつくなければその時間を少しずつ延ばします。そうして徐々に夜間のみの使用に切り替えていきます。
噛み合わせが定着したら二日に一度の夜間装着
夜間装着を一年半程度続けると噛み合わせが安定してきますので、二日に一度、三日に一度と少しずつ頻度を落としていきます。最終的にどの時点でリテーナーの使用を完全に中止するかは個人差がありますが、必ず担当の歯科医と相談して決めます。
リテーナーの種類
床型
取り外しができて、噛み合わせが安定しやすいです。ホーレータイプ、ベッグタイプとも呼ばれます。
マウスピース型
床型が使えない方などが使用します。マウスピース矯正で使用したマウスピースをそのままリテーナーとすることも。噛み合わせの調整はできないので、噛み合わせに問題がある方は別の方法がおすすめです。
ワイヤー式
接着剤で歯の裏側で固定するタイプなので、取り外しがききません。虫歯のリスクを抑えるために丁寧な歯磨きと定期的なクリーニングを受けることが大切です。装着期間は少なくとも二年で、歯列が後戻りしにくいのが利点です。
リテーナーがはまらなくなった! こんな時はどうしたらいいの?
リテーナーを長時間外していたせいで歯が動いてしまった結果、それまで使っていたリテーナーがはまらなくなってしまうことがあります。そんな時はすぐに担当医に相談してください。新しいリテーナーを作るか、再び矯正装置を着けるかを歯の動き具合などで判断します。いずれにしても別に料金がかかることは覚悟しておいたほうがよさそうです。
まとめ
矯正装置を外しても治療は終わりません。むしろそこからの、リテーナーを装着している時期こそが重要といえます。おそろしいのは、整えた歯並びを保てるか、元に戻してしまうかは本人のリテーナーの使い方によって大きな差がでてしまうというところ。きれいな歯を保てるように、 矯正歯科での言いつけをきちんと守りってリテーナーを使いましょう。
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